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2014/11/26

岩波書店の創業者・岩波茂雄の別荘だった、近代数寄屋建築の結実「惜櫟荘」

マキハウスデザインの旅

「惜櫟荘(せきれきそう」とは、
1941年竣工の岩波書店の創業者・岩波茂雄氏の別荘だった。

この家を設計したのは、吉田五十八(よしだいそや)氏。
建築界とさらに芸術の世界で認められ文化勲章も受章している。
伝統的な数寄屋建築に独自の近代化を図ったその意匠は、今でも鮮烈な印象を受ける。
















数寄屋建築としてのひとつの文化を作り上げ、
その功績は書籍などでも垣間見る事ができる。
































吉田五十八氏自邸外観写真

その吉田五十八氏設計の数寄屋の名建築とも言える「惜櫟荘」が
この度2011年に解体復元され新しく蘇った。
櫟を惜しんで残した家として、知られるこの佇まいを失ってしまうのは忍びないと
作家である佐伯泰英氏が私財を投じ、解体復元する形でこの建物の窮地を救った。

この建物を復元するにあたり、当初の設計を尊重し、
細部にわたり永く遺すための手立てが講じられているという。

惜櫟荘外観写真(新建築onlineより)
http://www.japan-architect.co.jp/jp/works/index.php?book_cd=201208&pos=11&from=backnumber

この建物の最大の特徴は、すべての建具を壁の中に引き込み、
部屋の開放感を最大限に引き出す事。
遮るものがなく、全ての部屋から海への眺望が一望できる設計になっていて、
この納まりが秀逸です。
















居間のL字型開口部(復元に携わられた梅沢建築構造研究所HPより)
http://www.use-web.co.jp/project/990

また、ここからの眺めと季節や様々な庭での出来事が、
”惜櫟荘の番人”である佐伯泰英さんのHPでも時折、紹介されています。
http://www.saeki-bunko.jp/hitorigoto/index.html

今回、紹介させていただいた「惜櫟荘」の復元にまつわるエピソードも
氏の著書として刊行されていますので、興味がある方は是非、ご一読ください。












惜櫟荘だより(職人作家の独りごとHPより)

この稀有でとても幸せな事例に畏敬の念を覚えるとともに
私たちも、住まう人に愛される建物を遺していきたいと強く思います。

惜櫟荘
吉田五十八
1941 Tokyo