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2016/06/01

眞木健一 プロフィール

豊かに暮らすということ

_MG_3716 眞木健一/1967年福岡県生まれ。父は警察官、母は実業家の一人娘(5人きょうだい)。幼稚園に上がる頃に両親は、実業家の祖父から自動車学校の経営を任される。その後、母は自動車学校経営に才覚を表し、父は不動産部門を任される。

地元の高校を卒業後、アメリカの大学に留学。この時、シカゴ、ロサンゼルス、ニューヨークのおしゃれな住宅街に接したことが、その後の家づくりの原点となる。21歳で大学を中退し東京の住宅会社に就職。ちょうど世はバブルのなごりの頃で、数億円の家をつぎつぎに販売する。

23歳になって結婚を機に東京で独立を考える。結婚の報告に福岡へ帰り、独立の意志を伝えたところ「不動産とか住宅の仕事をしているのだったら福岡で独立したら」と母から言われる。よくよく聞くと母は会社を立ち上げていた。当時は両親の跡を継ぐという気持ちは全くなく、所有している土地を整理したら東京に戻って事業を始めるつもりだったが、自然に「福岡で会社を大きくしていきたい」という思いが膨らみ、不動産・住宅事業を任されることになっていった。

アメリカや東京で見たようなデザイン性の高い住宅を売ろう、福岡の住宅を変えようと、これまで工務店に外注していたものを職人さんと一緒につくることに。28歳の時、不動産部門を縮小して、注文住宅事業を拡大する。しかし、住宅展示場の来客数は他のハウスメーカーを抜きん出てトップなのに、注文数は最低。自分たちのつくる家は他者に負けない「いい家」だという自信をもっているのに。家とは、「家の力」より「営業の力」で売るものなのだ……と実感。

その後、キャナルシティに、輸入もののインテリア・雑貨・建材などを集めたショールームをおき、高級住宅にこだわった家づくりを提案し続ける。海外などから集めた輸入雑貨や建材が倉庫にあふれ始めたので、それらを販売する「デザインホームセンター」を開設。世界から集めたこだわりの生活雑貨や建材は評判となった。この頃からニーズもあり、リフォーム住宅も手がけ始める。

[caption id="attachment_9480" align="alignleft" width="300"]history_canal キャナルシティ[/caption] [caption id="attachment_9482" align="alignleft" width="300"]デザインホームセンター デザインホームセンター[/caption]

Bivi福岡 ショールーム海外の展示会に出かけて、質の良いインテリア雑貨の買い付けをしていたこの頃に、建築家・安藤忠雄氏とヨーロッパなど世界中を回る機会があった。その時、建築とはどういうものかをあらためて真剣に考え、「遺っていかないと意味がないんだと」と感じる。このときから「遺す、遺る家」が経営理念となる。33歳のときだった。事務所をインテリア・家具のショップが集まる「BiVi福岡」へ移転。

[caption id="attachment_9484" align="alignright" width="300"]casa cube casa cube[/caption]

「いいものを買える価格でやっていこう」と、建築のプロが提案する企画住宅のカーサプロジェクトを立ち上げたのは35歳のとき。企画住宅なら高級住宅もコストダウンできる。この家のデザイン性の高さに300を超える全国の工務店が共感してくれ、一緒に取り組んでくれた。

[caption id="attachment_9485" align="alignleft" width="300"]伊都安蔵里 伊都安蔵里[/caption]

そして、もうひとつ大きな出会いが待っていた。それは、8年ほど前に出会った糸島の醤油蔵だ。醤油蔵の持ち主である老夫婦から「350坪の敷地を自分たちで管理できなくなった。地元の人たちの雇用に役立ち、何か地元にメリットのある場所として活かす方法はないか」と相談されたのだ。地元の人とワークショップを重ねた末に誕生させたのが「伊都安蔵里(いとあぐり)」だ。「旧福寿醤油」の昭和初期の建物を補修復元改修リノベーションして、地元野菜の販売所にしたのだ。地元の小さな農家さんが、安全で安心な野菜づくりのために手間ひまかけて育てた野菜を店頭で販売し、また、旬の野菜がたっぷり楽しめるレストランやほっこりくつろげるカフェをつくった。料理にいたるまで、提供してくれるのは、みんな地元の人たちだ。消費者と農家の出会いの場所となっている。

20代前半から工務店の仕事に取り組み、そして世界の住宅の性能を学び。日本の匠たちの職人技を大切に守りながら、「遺す家」を作ろうと突き進んできた。そして今、住まいを提供してきたお客さまには、健康で心豊かに暮らしていただきたいと考えるようになった。

使い捨て時代にはオサラバしよう。家づくりに真面目に取り組む職人や、安全な食に取り組む農家を大切にしたい。メンテナンスすることで一生暮らせる家に住み、安心できる旬の野菜をたっぷり体に取り入れ、美しい四季の変化を楽しむ……。住と食を通じてそんな心豊かな暮らしを提案したいという思いを込めて、2016年2月に『More Better Life 豊かに暮らすということ』(書肆侃侃房)を出版した。著書は他に『House-Designing Book 家づくりの本』(書肆侃侃房)、『新築を超える中古マンションリフォーム』(書肆侃侃房)、『住宅革命』(WAVE出版)。