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長坂常さんの講演会に行ってきました
エトセトラいつもお世話になっているアイカ工業さんにご招待いただき、長坂常さんの講演会に行ってきました。
数年前日本に初上陸してから、サードウェーブコーヒーブームが巻き起こるきっかけとなったBLUE BOTTLE COFFEEの店舗デザインを手掛けていらっしゃるのが長坂常さんです。他にも、Aesopの店舗や自由が丘のTODAY'S SPECIAL、'℃というカプセルホテルのリノベーションなど、独特の発想で数々のデザインを生み出していらっしゃり、常にそのプロジェクトが注目を浴びています。
こちらがブルーボトルコーヒー清澄白河店。元々工場だったところをリノベーションして、焙煎コーナーも備えた日本初のブルーボトルコーヒーの店舗となりました。この有名なお店を手掛けられた方にお話を聞けるなんて、大変貴重な機会となりました。
お話の中で特に心に響いたことをご紹介したいと思います。
素材が語ってくれる
リノベーションという数々の制限やハードルがある中でどんなデザインにするか。それは、着工前や解体後に現場を訪れた際に、素材が語りかけてくれる。この素材を活かそう、この色合を繋げていこう、ここは是非残していこう、このイメージをこのまま持っていこうなど、何を残して何を新しくしていくか、現場に行けば素材からたくさんのヒントを得られる。
既存の色のイメージを逆に活かす
現場にあった錆止めの塗装の色を新しい店舗のイメージカラーにしたり、塗り替えるのが難しいビル全体の色を逆に店舗の内装のメインカラーにして、お店を出た後に建物を見たお客様に、あ、この色だったのか、と思わせる。
近年のライフスタイルショップのデザイン
ライフスタイルショップが出始めたころは、お店側が来た人に「こんなものを使いましょう」「この部屋にはこれが合います」といった提案ができるようなレイアウトだった(例えば部屋別に空間が別れてそこに小物が置いてあったり)が、近年はSNSの活用で人々の目や感性が肥え、「お店に教えられる」から「自分で見つける」へ流れが変わった。それをどう空間に落とし込んでいくかがポイント。
どんなお店だったら入りたいと思うか、どうやったら買うか、自分に置き換えて考える
服を試着する時にサイズ違いの服をお店の方がストックルームに取りに行く間にテンションが下がってしまう。それを阻止するために、間髪入れずに服を試着できる空間デザインを考えた結果、このデザインが生まれたそう。
着想において習慣にしていることはありますか?という質問に対して
流行りに乗るのではなく、知るということ、知の更新に貪欲であり続ける。日々歩いていて気になったものを写真に撮るなど、日常にあるものにいつも注意している。
ブランドの哲学を表現するのが店舗デザイン
こちらのAesopの店舗において
ディスプレイ家具の縦方向(側面)は、戸建住宅の解体現場の廃材を使ってリメイクしたそうですが、サイズや大きさも様々なボトルをディスプレイするに当たってどうやって寸法を考え家具を設計していったのか、という質問に対しては、それはイソップ側に徹底した軸や哲学があり、それにデザイナーが素材を当て込んでいるだけだ、という回答でした。どの店舗も素晴らしいデザインですが、例えばこのイソップのディスプレイに対するぶれない軸や、ブルーボトルコーヒーにおいては、焙煎してドリップしてコーヒーを出すまでの過程を楽しんでいただくというコーヒー哲学、ブランドそれぞれに大切にしている精神があり、それをどう空間で活かしていくか、それこそが店舗デザインなのだなと感じました。
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